
電子書籍(でんししょせき)とは、古くより存在する紙とインクを利用した印刷物ではなく、電子機器のディスプレイで読むことができる出版物である。電子書籍はソフトウェアであるコンテンツだけを指すが、ハードウェアである再生用の端末機器(リーダー)も重要な要素であり、本記事ではコンテンツと端末機器の両方について記述する。
呼称については電子書籍の他、電子ブック、デジタル書籍、デジタルブック、Eブックといった呼称が存在する。
コンテンツの流通と再生の方式の違いにより、以下の形式が存在する。
携帯電話や携帯情報端末などで携帯電話ネットワークやインターネットからダウンロードして閲覧する
PC等でインターネットからダウンロードして閲覧する
PC等でインターネットからダウンロード後、さらに再生用小型機器にダウンロードして閲覧する
概要
電子書籍のコンテンツの多くは、既に出版された紙の書籍の情報を、デジタルな文字情報や必要ならば挿絵をデジタル画像情報へ変換して電子ファイルにすることで、印刷、製本、流通のコストや省スペース性を図ったものである。このコンテンツには有料のものの他に無料のものもあり、多くが無線・有線のネットワークを経由してダウンロード後、電子機器の画面上に表示させて読む。また紙の書籍では不可能な、ハイパーリンク・動画・音声・振動(バイブレーション)などを併用したコンテンツも存在する。
読者が携帯無線接続やインターネット接続を使用すれば、書籍の購入が即時化できて本棚に場所を占めずに済み、出版社やコンテンツ・プロバイダ側でも在庫確保と資産コスト、絶版による販売機会の喪失が避けられる。環境の観点からは、紙・在庫・流通・店舗などの負荷軽減の側面と、電力消費や機器の陳腐化や廃棄などの負荷発生の側面がある。また著作権や課金などの課題が存在する。
歴史
新聞・雑誌・書籍という従来型の出版形態に代わって携帯型の電子装置の表示画面でこれらを読むという考えは古くから存在し、1990年から小型の専用機器が販売[1]されるなど電子書籍の普及に向けた事業がはじまった[出典 1]。また電子辞書も広義では電子書籍用リーダーの一種であるとみなされることがある。
元々World Wide Web(WWW)は電子ネットワーク上で学術論文同士を容易に結びつける合うように作られ、論文だけでなくブログに代表される多様な形態の無料コンテンツの拡大でインターネットは今では巨大に成長したが、この成長過程では有料コンテンツの販売も試みられ、一定の需給関係を作っているが課金の手間などによって比較的限定的なものにとどまっている。
インターネット利用が一般化した2000年前後より、テキストファイルによるコンテンツの提供がプロジェクト・グーテンベルクや青空文庫などで著作権切れ作品の有志によるテキスト化や著作者自身によるコンピュータ・ネットワーク上での配布も存在する。2000年代ではコンテンツへの課金方法が整備され、利益を創出する有料メディアとして、小説以外にコミックや雑誌または写真集などの電子書籍も登場している。 大きく分けてダウンロード型とオンラインで閲覧するストリーミング型の2つの形態が存在し、ファイル形式やデータ形式もさまざまで、代表的なPDFやEPUBを含め、日本国内だけでも20種類以上のファイルフォーマットが存在する。ただし、多くは世界水準として認められているとは言えないものである。
今日のネットワーク経由の電子書籍は、印刷と製本などの有形物のコスト負担がないために価格が安く出来ると一般に考えられるが、実際にはコンテンツの複雑な権利関係のため、印刷物より高価格のものが存在する。[2]また、アメリカにおけるアマゾンのキンドルストアとは異なりその話題の新作がすぐに電子書籍として発売されるケースは少ない。
コンテンツ
電子書籍は書籍出版の一形態と考えられ、そのページ内の情報はインターネット・ウェブと同様にコンテンツと呼ばれる。コンテンツそのものが多様な種類があり、これを提供する側もさまざまな関係者が存在する。
既存物の権利
コンテンツの多くは紙媒体での出版を前提とした契約下で関係者が製作に携わったものであり、その電子化と公開ではそれら関係者の利権が絡み合い、デジタル情報ゆえに新たな契約が対象とする配布媒体・データ形態の範囲が判り難いなど、コンテンツの電子化にも技術面以外の様々なハードルが存在している。
著作権切れの無料物
プロジェクト・グーテンベルグや青空文庫のような著作権切れコンテンツも存在するが、そういった過去の作品だけでは電子書籍の利用者のニーズを満たせない。著作権切れの書籍などをデジテル情報による無料コンテンツへ加工する作業は、ボランティアか無償提供目的の公益の事業[3]などが行なっているが、逆に商業的な電子書籍の流通網は(基本的に)使用できないために、閲覧者の利便性を損なう面もある。
大手IT企業の動き
オンライン書店最大手のAmazonや検索サイトのGoogleの2社は、これまで紙媒体で存在するメディアの電子書籍化を大規模に進めている[4]。
新聞・出版社などの立場
世界的に日刊新聞の発行部数は下降しており、日本では出版業界も1990年中頃から後半にかけて販売が減少し、これらの電子書籍への参入を後押ししている[5]。
携帯電話用コンテンツ
携帯電話では、少なくとも日本ではケータイ小説という形で電子書籍を普及させた。欧米ではスマートフォンのiPhoneが画面が大きく操作性も向上し、コンテンツもアマゾン社のKindle向けを購入できるなど充実したことで電子書籍の普及が始まっている。
日本でもiPhoneは普及しているがケータイ小説を除けばコンテンツ整備が遅れており[6][7]、今後の充実が待たれる[8][出典 1]。
図書館
公立図書館では、2002年北海道岩見沢市立図書館が電子書籍の閲覧サービスを始めたが、需要が少なかったため、書店の指定した:2カ月の無償での試行の後、取り止めとなった。2005年から、奈良県生駒市立図書館が電子書籍端末「リブリエ」による電子書籍の閲覧・貸出サービスを行っている。
端末機器
専用端末
電子書籍を閲覧するための専用端末(電子ブックリーダー)は、書籍に比較していくつもの課題が求められる。
読みやすい画面
小型で書籍より軽いか同等
長時間動作
コンテンツの購入が容易
初期コストとなる専用端末の価格が廉価である
他にも、耐衝撃性や簡易な耐水性、複数の電子書籍フォーマット対応、盗難防止の工夫などが求められる。
また、携帯型情報端末ゆえに類似機器の機能の対応も可能な限り求められる。
画面のカラー化
動画、静止画、音楽の再生機能
インターネット接続機能
向上した技術
表示部に電子ペーパーが使われ始めている
大容量で低価格となったフラッシュメモリの採用で、多数の電子書籍を格納できる
バッテリーの性能の向上と電子回路の省電力化技術によって、長時間使用が実現
特に電子書籍専用端末に向いた最新技術には新たな種類の電子ペーパー[9]があり、これまで以上に省電力で高コントラストの表示が実現するとされる[出典 1]。
端末本体価格は依然高いことが挙げられる。この辺りは普及による量産効果や共通規格の策定も絡んでコモディティ化などによる低価格化競争も期待されるが、現時点でそういった電子書籍データフォーマットの共通化などといった動向はみられず、依然として紙媒体を置き換えるほどの普及を見せるかどうかは未知数となっている。
電子辞書
電子書籍より一歩先に印刷物から電子媒体へと変化して普及しつつあるのが電子辞書である。電子辞書も国語辞典や英和・和英辞書といった特定の辞書1冊だけを含んだものから、多数の辞書情報を含んだ上にクイズやゲーム、辞書拡張用の専用メモリカード対応など付加的機能を備えた上級機種が登場しており、メモリーカードで外部からテキストファイル等を取り込んで読む事のできる機種では電子書籍に近い利用方法が可能になっている[10][出典 1]。
携帯電話
通信機能と液晶表示部を備え、アプリケーション・プログラムをダウンロード配信する携帯電話機は電子書籍コンテンツに対応した再生用ソフトウェアさえ搭載すればすぐに電子書籍端末になる。普及台数や小型であること、すでにメールなどで小さな画面に違和感が少なくダウンロードも一般化していること、課金システムがすでにあることなど、多くの点で携帯電話機が電子書籍の端末として広範に普及する可能性は十分にある。すでにスマートフォンのiPhoneが欧米では電子書籍の端末として広がり始めている[出典 1]。
デジタル・オーディオ・プレーヤー
デジタルオーディオプレーヤーの中には、テキスト・ファイルを表示できる機種が存在する。本来は歌詞を表示させる目的であったようだが、利用者はテキスト形式の電子書籍を自分で入れて利用する使い方も見られる。
パーソナルコンピュータ
パーソナルコンピュータ(デスクトップPC、ノートPC、ネットブックなど)は、ソフトウェアを選ぶことで多様な使用法が行なえ、電子書籍の再生もその1つとなる。デスクトップPCからネットブック、そして携帯情報端末までは、可搬性や用途の面で少しずつ異なりながら連続的に並んでおり、大きいものは画面が大きく動画表示などでも能力に余裕があるが可搬性・携帯性は損なわれる。小さいものは画面が小さく動画再生をはじめ処理性能が求められる機能は備えず、使用時間も制約を受けるが携帯性がある。 PCに分類される前者3つは電子書籍の再生にPC用ソフトが必要になる。
PC用ソフト
PCにダウンロードして実行することで、電子書籍コンテンツを再生するものがある。多くが独自の電子書籍ファイル・フォーマットに対応する電子書籍再生ソフトである。HTMLやPDFのような広く利用されているフォーマットの電子書籍コンテンツ[11]では電子書籍専用の再生ソフトは必要としない。
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